日本応用数理学会2016年度年会に参加・発表

日本応用数理学会2016年度年会(平成28年9月12日(月)~14日(水)、北九州国際会議場)に参加・発表いたしました。発表タイトルは、「カオス尺度からリアプノフ指数への変換の可能性」です。

力学系のカオスの定量化にはリアプノフ指数がよく用いられますが、リアプノフ指数を厳密に計算できるのは、力学系の方程式が微分方程式や差分方程式で与えられているときに限られます。そこで、本著者等は、情報理論の観点から導入されたカオスを測る指標であるカオス尺度を用いて、力学系のカオスを定量化する試みを行ってきました。

今回の発表では、一般化シフト写像という一様なカオスを生成する写像を通して、カオス尺度からリアプノフ指数への変換式を導出し、ロジスティック写像に代表される間欠性のあるカオスを示す写像への適用が可能かどうかを検討しました。

結論としては、一様なカオスにおける変換式を間欠性のあるカオスへの適用は困難との否定的な結果でしたが、本講演後に、奥富先生(東芝情報システム)より、カオス尺度の領域分割の仕方をKSエントロピーベースの領域分割の仕方に合わせることで、間欠性のあるカオス写像(ロジスティック写像)であってもカオス尺度からリアプノフ指数への変換が可能であるとのアドバイスをいただきました。系の情報が時系列しか得られない場合は領域分割の仕方を等分割ベースで設定せざるを得ないとは考えておりますが、何らかの工夫を試みてみたいと考えております。

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予稿集原稿

 

第55回 実函数論・函数解析学合同シンポジウムに参加・発表

第55回 実函数論・函数解析学合同シンポジウム(平成28年9月1日~3日、首都大学東京)に参加・発表いたしました。発表タイトルは、「量子ゼノ効果に関連した量子系の時間発展」です。

量子ゼノ効果は、概連続観測の下では量子系の時間発展が抑制されるという効果と関連しており、本発表では、この抑制の記述に関して、2つの可能性について言及し、その内、その一つの可能性について議論した結果報告です。内容は、以下の論文に基づいております。

K.-H. Fichtner and K. Inoue,
Time evolution of quantum systems related to the quantum Zeno scheme,
International Journal of Pure and Applied Mathematics,
Vol.4, No.1 (2015), 115-126.